「年金が支給停止になるなら、働かない方が良い!」
という高齢者の風潮を一新するため、
60歳以降も働けば働くほど年金が増えていくのが『在職老齢年金』です。
『在職老齢年金』は、働く高齢者を支える制度と言えます。
しかしながら、喜んでばかりいられないのです。
実は、雇用されて働くことで、
年金の全部または一部が支給停止になる場合があるからです。
そこで、
✅『在職老齢年金』の支給停止対応
について解説しますね。
年金が支給停止になる場合
2022年4月以降、「在職老齢年金」と「老齢厚生年金」に関する制度が大きく変わりました。
そこで、
支給停止に関わる年金について、簡単におさらいします。
「在職老齢年金」とは、
働き続けながら年金をもらう60歳以上の方に関係する制度で、在職中にもらえる年金のことです。
「老齢厚生年金」とは、
一定の年齢になるともらい始めることができる老齢年金のことです。
さて、年金が支給停止になるのは、
・60歳~64歳から支給される「特別支給の老齢厚生年金」
のいずれかです。
改定された基準額である50万円を超えた場合に、一部または全額が支給停止されます。
簡単に説明しますと、
「もらえる賃金・賞与」と「もらえる年金」の合計額が50万円以下なら、年金は全額支給されます。
例えば、
●総報酬月額相当額:25万円
・標準報酬月額20万円+標準賞与額(60万円÷12)
の場合は、
10万円+25万円=35万円
となり、50万円以下なので支給停止は無しです。
そして、
多くの高齢者はあまり影響は無いのですが、
「もらえる賃金・賞与」と「もらえる年金」の合計額が47万円を超えた場合は、年金は一部または全額が支給停止されてしまいます。
例えば、
●総報酬月額相当額:45万円
・標準報酬月額40万円+標準賞与額(60万円÷12)
の場合は、
15万円+45万円=60万円
となり、50万円を超えた分の半分が支給停止となります。
ですから、
60万円−50万円=10万円
10万円÷2=5万円
5万円が支給停止となります。
もらえる老齢厚生年金額は、
15万円−5万円=10万円
となります。
細部の計算方法は、こちらをご覧ください。
⇒『【年金】働くと減額される理由!いくらもらえる?改定後の計算方法』
『在職老齢年金』の支給停止への対応
前述しました様に50万円を超えた場合に、
年金は一部または全額が支給停止されてしまいます。
そして、
✅毎年の年金額の増額
により、在職老齢年金の支給停止基準である50万円を超える労働者が出てくる可能性があります。
今までは高齢者ゆえ賃金さえ上がらなければ、50万円を超えなかったものが、年々と年金額が増えていくために働いている途中で超える場合もでてきます。
その場合は、
どうすれば良いのでしょうか?
労働者として、雇用されて働いているわけですから、
「老齢厚生年金」が支給停止になってもよいか?
賃金を減らすか?
を選択することになります。そのためには、支給停止への対応として判断するための材料が必要ですね。
それが、
②退職改定
③損益分岐点
の3つになります。
①在職定時改定
「在職定時改定」とは、毎年、働いている厚生年金保険加入期間を追加して、年金額の再計算が行われることです。
ただし、在職定時改定の対象は、65歳以上70歳未満の方に限られます。
65歳以降、基準日である9月1日に、被保険者である受給権者の「老齢厚生年金」について、毎年、基準日の属する月前の被保険者期間を追加算入されるようになりました。
そして、基準日の属する月の翌月である10月に、年金額の再計算が行われます。
②退職改定
「退職改定」とは、厚生年金保険に加入しながら「老齢厚生年金」を受けている方が、退職して1カ月を経過したときは、退職した翌月分の年金額から見直されることです。
改定のメリットは、
・年金額に反映されていない退職までの厚生年金保険加入期間を追加して、年金額の再計算が行われる。
ということです。
③損益分岐点
日本人の平均寿命は、男性が81.64歳、女性が87.74歳です。
早いうちから年金を受給して、美味しいものを食べたり、旅行したりなどをしたいと思う人は多いことでしょう。
しかしながら、年金受給を1ヶ月遅らせるだけで、0.7%づつ増加するという制度も魅力です。
では、年金を貰う時期を繰り下げた場合、
何歳のときから貰うのが得なのでしょうか?
この記事は別に書いています。
⇒『【損益分岐点】年金の繰り下げ受給!いつ貰うのが得なのか?』
まとめ
今回は、
『【在職老齢年金】働くことで支給停止!実例と3つの対策』
と題しまして、
✅『在職老齢年金』の支給停止対応
について解説しました。
『在職老齢年金』は、働く高齢者を支える制度ですが、雇用されて働くことで、年金の全部または一部が支給停止になる場合がありました。
そこで、支給停止への対応として判断するための材料となる、
②退職改定
③損益分岐点
の3つについて説明しました。