「年金」について知っておくことは大切なことです。
しかしながら、
老齢年金は複雑であり、調べたている途中で『経過的加算』という聞きなれない言葉に、
「経過的加算とは何だろう?」
「加算分は、いくらもらえるのかな?」
と疑問を感じることでしょう。
そこで、この記事では、
老齢年金に加算される「経過的加算」について、意味や加算額の計算方法を解説します。
老齢年金を増やすための働き方を理解しちゃいましょうね。
『経過的加算』とは?
『経過的加算』とは、
特別支給の老齢厚生年金の定額部分と老齢基礎年金の差額を補うもので、65歳以上の老齢厚生年金に加算される年金です。
聞きなれない方もいると思いますので、
「ねんきん定期便」を例に説明しますね。
このように、
老齢基礎年金の金額①が満額でない人は、
老齢厚生年金の経過的加算部分の金額②で加算されることになります。
そして、『経過的加算』は、
65歳未満の特別支給の老齢厚生年金には加算されません。
なお、
個人事業主のように国民年金だけの人は対象外となります。
老齢年金の変化
「老齢年金」は、
昭和61年4月以降の制度改正により、
から、新法では次のようになりました。
なお、
加算額は加給年金額となりますが、ここでは説明を除きます。
では、
下図の老齢年金のイメージを見てください。
図からわかりますように、
65歳以降に定額部分が「老齢基礎年金」に置き換わっています。
しかし、
「老齢基礎年金」の金額だけでは今までの定額部分を補いきれていませんね。
そのために、『経過的加算』を加えてその差額を補ったわけです。
『経過的加算』は、いつまで?
『経過的加算』は、一生涯支給されます。
働きながら年金をもらう「在職老齢年金」制度によって、たとえ老齢厚生年金が全額支給停止になっても、経過的加算は全額が支給されます。
なお、「在職老齢年金」制度についてはこちらを参考にしてください。
『経過的加算』の表記
老齢年金に加算される「経過的加算」は、
ねんきん定期便には、「経過的加算部分」と表記されています。
そして、
日本年金機構の老齢年金ガイドでは、
「経過的加算額」と表記されています。
また、「差額加算」と呼ばれることもあります。
経過的加算の計算方法と比較
では、老齢年金の経過的加算について、
実際どれくらいの額が支給されるのか?
を計算して比較してみましょう。
早いうちに言っておきますが、必ずしも、
厚生年金加入期間の長い人が多く受給できるわけではない!
ということがあり得ますので注意してください。
なぜなら、
老齢年金の経過的加算の額は、
厚生年金の加入期間や加入していたタイミング、退職する年齢などによって異るからです。
計算する条件について
『経過的加算額』は、
「特別支給の老齢厚生年金の定額部分」から「老齢基礎年金」を引いて算出します。
計算式は、次のとおりです。
『経過的加算額』の計算する条件は、
・生年月日に応じた率:1
・老齢基礎年金額:77万7800円
・免除期間:1年に満たない納付期間はなしとする
とします。
つまり、
Aの定額部分の計算式は、
「1,621円×厚生年金の加入期間」
となります。
そして、
Bの老齢基礎年金部分の計算式は、
「77万7800円×加入期間÷480月」
となります。
それでは、
②厚生年金の加入期間が満期ではなく、65歳で退職の場合
を比較してみましょう。
①厚生年金の加入期間が満期で、60歳で退職の場合
・厚生年金加入期間:480月
・加入可能期間:480月
1621円×1×480 - 77万7800円×480÷480
= 77万8080円 - 77万7800円
= 280円
となりますので、経過的加算として、
年間280円が支給されます。
②厚生年金の加入期間が満期ではなく、65歳で退職の場合
・厚生年金加入期間:420月
・加入可能期間:360月
ここで、加入可能期間とは、
厚生年金加入期間のうち20歳以上60歳未満であった期間です。
1621円×1×420 - 77万7800円×360÷480
= 68万820円 - 58万3350円
= 9万7470円
この場合、経過的加算として、
年間9万7470円が支給されます。
老齢年金を増加させるワザ
『経過的加算額』について、
「特別支給の老齢厚生年金の定額部分」から「老齢基礎年金」を引いて算出し、
①厚生年金の加入期間が満期で、60歳で退職の場合
②厚生年金の加入期間が満期ではなく、65歳で退職の場合
を比較してみた結果から、
言えることは何でしょうか?
加算額を増やすことはできるのでしょうか?
『経過的加算額』を増やせる場合
『経過的加算額』を増やすには、
65歳まで働いて厚生年金の加入期間を延ばすことです。
なぜなら、
老齢基礎年金の計算方法では、
厚生年金の加入可能期間により、老齢基礎年金が低く計算されてしまうことがあるからです。
でしたら、
厚生年金の加入期間が満期に達していない場合は、
60歳以降も働いて厚生年金の加入期間を延ばすことです。
経過的加算額を増やせる可能性があるなら、65歳まで働きましょう。
『経過的加算額』を増やせない場合
厚生年金に加入可能な期間が480月の満期の場合は、
経過的加算額を増やせる可能性がありません。
なぜなら、
そもそも、老齢基礎年金のほぼ満額が支給されているからです。
「加算額が少ないんだけど…」
と嘆くことはありません。
加算額が少なくても、損をしているわけではありませんからね。
まとめ
今回は、
『【経過的加算】とは?老齢年金を増加させるワザ<計算例>』
と題しまして、
「経過的加算とは何だろう?」
「加算分は、いくらもらえるのかな?」
と疑問のある方に解説しました。
『経過的加算』とは、
「定額部分」が「老齢基礎年金」に置き換わった際、「老齢基礎年金」の金額だけでは今までの定額部分を補いきれませんでした。
そのために、その差額を補って加算された額のことでした。
そして、『経過的加算』は、
65歳以上の老齢厚生年金に加算される年金であり、対象となる方は限られますが、60歳以降も働いて厚生年金の加入期間をのばすことで加算額を増やせることを説明しました。