60歳以降に働きながら受給する老齢厚生年金を「在職老齢年金」といいます。
現在では、「65歳以降も働きたい」という方も増えていますが、60歳以降厚生年金に加入して働くと、在職老齢年金の仕組みにより年金が減額されることになります。
「年金はカットされたくない!」
と普通の方なら思うことでしょう。
そのためには、年金がカットされないための働き方を工夫しなければなりません。
そこで今回は、60歳以降働いても年金がカットされない働き方や収入の方法について紹介します。
65歳以降も働きたい人へ!年金に影響のない働き方や収入方法
厚生年金に加入しながら働いた場合、
総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額を足した金額が50万円を超えると、老齢厚生年金の一部、または全部が支給停止となります。
・総報酬月額相当額(年間給与等+賞与の1/12)
・老齢厚生年金の基本月額(年額の老齢厚生年金を12で割ったもの)
ただ、60歳以降「在職老齢年金」で調整されるのは、老齢厚生年金の部分だけです。
老齢基礎年金(国民年金)は収入がいくら多くても、支給停止になりません。
今回は、年金を減らさずに働く方法を説明しますね。大きく分けると、
✅「基準額以下となる給与で働く方法」
の2つです。
「厚生年金に加入せずに働く方法」
そもそも老齢厚生年金に加入しない働き方にすれば、老齢厚生年金が支給停止になることはありません。
厚生年金に加入せずに働くには、次のような方法があります。
①厚生年金加入が必要でない条件で勤務する
厚生年金加入が必要となるのは、正社員の4分の3以上の労働日数・労働時間がある人、または次の条件をみたす人です。
2 1週間の所定労働時間が20時間以上
3 2か月超の雇用の見込み
4 月額の賃金が8.8万円以上
上の条件に当てはまらないようにすれば良いわけですね。
たとえば労働時間を週20時間未満に抑えると、年金を減額されずにすみます。
②個人事業主として働く
フリーランスや業務委託で働く場合には、個人事業主ということになり、厚生年金加入は必要ありません。
③厚生年金に加入していない事業所で働く
株式会社などの法人には厚生年金加入が義務付けられています。
しかしながら、従業員4人以下の個人事務所などは加入が任意です。厚生年金非加入の事業所で働けば、厚生年金に入る必要はありません。
「基準額以下となる給与で働く方法」
それでは、老齢厚生年金が支給停止とならないためには、収入をいくらにすれば良いのでしょうか?
結論は、年金月額と給与月額が合わせて50万円以下にすれば年金は減額されません!
もしも、基本月額と総報酬月額相当額との合計が48万円を超える場合は、
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2
の計算式で支給停止額がわかります。
それでは、年金が減額されない給与収入例について2つ説明しますね。
年金が減額されない給与収入例1
たとえば、厚生年金の月額が10万円の場合です。
50万円 ー 10万円 = 40万円
となりますから、給与月額を40万円以下に抑える必要があります。
ただ、給与月額を計算する際には過去1年分のボーナスも含みます。
そのため、過去1年分のボーナスを60万円とすると、
60万円 ÷ 12 = 5万円
ですから、給与35万円以下に抑えれば年金をカットされずにすみます。
年金が減額されない給与収入例2
老齢年金額が18万円としましょう。そして、
「老齢基礎年金」は満額の約6万8000円(令和6年度)を引くと、「老齢厚生年金」は月11万2000円となります。
18万円 ー 6万8000円 = 11万2000円
その場合、以下の計算のように、
50万円-11万2000円(老齢厚生年金額)=38万8000円(総報酬月額相当額)
総報酬月額相当額が38万8000円までであれば老齢厚生年金額は全額支給されるということになります。
注意すべきことは、通勤手当も含まれる点です!
したがって、ボーナス支給がないようでしたら、
月収+通勤手当を38万8000円以内におさめればいいということになります。
ただし、『在職老齢年金』で一部支給停止された場合、「給料を減額すればいいや」と思った人もいると思いますので、こちらの記事を参考にしてください。
⇒『【在職老齢年金】もらい過ぎ分の給料減額は意味はあるのか?』
まとめ
今回は、
『65歳以降も働きたい!年金に影響のない働き方や収入は?』と題しまして、
年金を減らさずに働く方法について、
「厚生年金に加入せずに働く方法」と
「基準額以下となる給与で働く方法」の2つを説明しました。
「厚生年金に加入せずに働く方法」には、
①厚生年金加入が必要でない条件で勤務する
②個人事業主として働く
③厚生年金に加入していない事業所で働く
という方法があることを説明しました。
「基準額以下となる給与で働く方法」では、年金月額と給与月額が合わせて50万円以下にすれば年金は減額されない具体的計算例を2つ紹介しました。